「ウイスキーを飲む」から、「ウイスキーを訪ねる」へ。
いま、日本のウイスキー愛好家の間で静かに広がっているのが、
**クラフト蒸留所を巡る“大人の旅”**です。
一杯のグラスの向こうにあるのは、自然・人・時間。
ボトルのラベルだけではわからない“土地の物語”を探しに行きましょう。
🍂 【秩父蒸留所(埼玉県)】
――森と時間に抱かれる、ジャパニーズクラフトの聖地
都心から電車で2時間。秩父の山あいに、
木と石と蒸気の香りが漂う“ウイスキーの小さな村”があります。
「Ichiro’s Malt」で知られる肥土伊知郎氏の蒸留所では、
発酵槽の木肌、熟成庫の温度、風の流れまでがウイスキーの一部。
見学ツアーでは、
- 伝統的なミズナラ樽の熟成庫
- ポットスチルの造形美
- テイスティングルームでの香り体験
が用意され、まさに“五感で味わう工房”といえます。
🍸 おすすめの過ごし方:
ツアーのあとは、秩父神社周辺の古民家カフェで「ウイスキー×秩父プリン」のペアリング。
意外にも甘いスイーツが、モルトの香りを引き立ててくれます。
🌊 【厚岸蒸留所(北海道)】
――北の海風が育む、ピート香の記憶
北海道・道東の港町、厚岸。
冬には凍てつく潮風、夏には深い霧。
そんな厳しい自然が、厚岸ウイスキーの“個性”をつくり出しています。
「スコットランドのアイラ島を再現したい」との思いから誕生したこの蒸留所では、
地元産の大麦、厚岸のピート、そしてミズナラ樽が使われています。
テイスティングでは、
- ピート香と潮風の融合
- バニラと海塩が溶け合う香り
- “静かな炎”のような余韻
が体験でき、北の大地の息吹を感じることができます。
🚗 おすすめの旅プラン:
釧路湿原ドライブとセットで。
夕暮れの海沿いで一杯飲むノンアルモルト(試飲用)も格別です。
🔥 【三郎丸蒸留所(富山県)】
――伝統と革新をつなぐ、ピートの魂
北陸・砺波平野にある三郎丸蒸留所は、
戦後日本の“最古のクラフトウイスキー”を受け継ぐ地。
2020年代に入ってからは、
世界初の鋳造スチル「ZEMON」や、樽熟成×AI管理などの技術革新で、
再び注目を集めています。
ツアーでは、歴史ある木造倉庫の見学や、
ZEMONの音を間近で聴く体験が可能。
👣 おすすめコース:
見学後は隣接するバー「SABURO BAR」で、蒸留直後の原酒を味わって。
スモーキーな香りが、どこか懐かしい昭和のウイスキーを思い出させます。
🗾 日本のウイスキー旅が教えてくれること
クラフト蒸留所を訪ねる旅は、
単に「酒を飲む」ためではありません。
そこにあるのは、
- 地域に根ざした文化
- 職人の哲学
- そして、“時間を味わう”という贅沢
ひと口飲むごとに、その土地の空気が体にしみわたっていく。
ウイスキーは、最もゆっくり旅をするお酒なのです。
✈️ 次の休日、旅先で「一杯の物語」を。
もしあなたが、
「ウイスキーってどこか難しそう」と思っているなら、
一度、蒸留所へ足を運んでみてください。
蒸気の音、樽の香り、作り手の笑顔。
その空間に立つだけで、ウイスキーが“生き物”であることに気づくはずです。
――グラスの中に、旅の記憶を。

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