金沢といえば、加賀友禅や金箔、九谷焼など、伝統工芸が息づく街。
しかしもうひとつ、この地を語る上で欠かせないのが「お茶文化」です。
古くから茶の湯が盛んだった金沢では、家庭や商家でも“お茶を点てる”習慣が根づいており、
その延長線上で生まれたのが、今や全国的に知られる「棒ほうじ茶」なのです。
🍵 金沢に根づく「おもてなし」のお茶文化
加賀藩の時代、金沢では「茶の湯」が武士や町人の教養として重んじられました。
その精神は現代の金沢にも受け継がれており、たとえばお客を迎える際に出される一杯のほうじ茶や和菓子には、
“心を添える”という日本らしいおもてなしの美学が宿っています。
茶室文化だけでなく、一般家庭でも「お茶を丁寧に淹れる」ことが日常にある——。
それこそが金沢の茶文化の原点です。
🌾 棒ほうじ茶の誕生——“偶然”が生んだ香ばしき味
今では金沢を代表するお茶となった「棒ほうじ茶」ですが、実はその誕生には“偶然”がありました。
昭和30年代、金沢の老舗茶舗「丸八製茶場」で、店主が偶然、茎の部分だけを焙煎したのがきっかけ。
その香りがあまりに素晴らしく、試飲した人々が「これを売ってほしい」と言い出したのです。
こうして、通常は脇役だった“茎茶”が主役となり、金沢独自の「棒ほうじ茶」という文化が広がっていきました。
🫖 棒ほうじ茶が愛される理由
- 香ばしさと甘みのバランス
焙煎によって生まれる香ばしさに、茎特有のやさしい甘み。
お菓子や食事との相性が抜群です。 - すっきりとした後味
渋みが少なく、口当たりが軽やか。
食後や夜のリラックスタイムにもぴったり。 - 季節を問わず楽しめる
夏は冷やしてアイス棒ほうじ茶に、冬はミルクやスパイスを加えて温かく。
金沢では季節に合わせて飲み方を変える家庭も多いそうです。
🍡 金沢の“お茶と和菓子”の組み合わせ
金沢のもう一つの魅力が、棒ほうじ茶とともに楽しむ“和菓子文化”。
代表的な組み合わせとしては、次のようなものがあります。
- 森八の落雁(らくがん)×棒ほうじ茶
上品な甘さをほうじ茶の香ばしさが引き立てる。 - 中田屋のきんつば×棒ほうじ茶ラテ
濃厚なあんことミルクの柔らかな味わいが好相性。 - 金沢うら田の柴舟×冷たい棒ほうじ茶
生姜の風味と爽やかな後味が夏にぴったり。
🏯 金沢で味わう“本場の一杯”
もし金沢を訪れるなら、以下の場所で本場の味を堪能してみてください。
- 丸八製茶場 東山直営店「一笑」
創業150年以上。焙煎機の音と香りに包まれながら、棒ほうじ茶の世界を体験できます。 - 加賀棒茶 丸山茶舗
香りの深い「手焙煎棒茶」が人気。試飲も可能です。 - 兼六園周辺の茶屋街
棒ほうじ茶と和菓子のセットを提供する茶房が点在。
四季折々の景色とともに味わう一杯は格別です。
🌸 まとめ:香りと文化をつなぐ、金沢の一杯
棒ほうじ茶は、単なる飲み物ではなく、
「人と人をつなぎ、心を落ち着ける」金沢の文化そのものです。
観光で訪れる人にとっては、街の静かな香りを感じる入口に。
日常に取り入れる人にとっては、自分を整える“香りの習慣”として。
一杯の茶が、心の余白を作る。
それが、金沢のお茶文化の本質なのです。

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