今村昌弘『魔眼の匣の殺人』——予言と恐怖に揺れるクローズドサークル

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デビュー作『屍人荘の殺人』で鮮烈なデビューを飾った今村昌弘。
そのシリーズ第2弾として発表されたのが『魔眼の匣の殺人』(まがんのはこのさつじん)です。
「予言」と「超能力」をテーマに据えながら、本格ミステリとしての緻密な謎解きを展開する本作は、多くの読者から高い評価を得ました。

あらすじ(ネタバレなし)

舞台は、人里離れた班目機関の元研究施設「魔眼の匣」。
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子を含む9人が訪れると、そこに住む老女が衝撃的な予言を告げます。

「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」

やがて外界と繋がる唯一の橋が燃え落ち、匣は完全に孤立。
逃げ場のない空間で、次々と起こる死の連鎖。さらに、同行していた女子高生が「自分は予知能力者だ」と告白し、事件は理性と非理性がせめぎ合う混沌へと突入していきます。

本作の読みどころ

1. クローズドサークルの緊張感

閉ざされた「魔眼の匣」で、逃げ場を失った登場人物たち。予言と実際の死が重なる恐怖は、読む者にも息苦しさを与えます。古典的なクローズドサークルの魅力を、現代的なテーマと組み合わせているのが特徴です。

2. 「予言」と「超能力」という特殊設定

ただの殺人事件ではなく、老女の予言や女子高生の予知能力が絡むことで、事件の輪郭がより複雑に。超常的に見える現象を論理で解き明かす過程は、本格ミステリの醍醐味そのものです。

3. キャラクターの成長と関係性

探偵役・剣崎比留子の冷静さ、語り手・葉村譲の不器用ながらも誠実な視点は、前作より一層深みを増しています。読者は彼らと一緒に「真実を見抜く」体験をすることができます。

評価と位置づけ

『魔眼の匣の殺人』は『屍人荘の殺人』に続き、各種ミステリランキングでも上位を獲得。
「驚愕の連続」「最後まで予想できない」「特殊設定ミステリとして完成度が高い」といった感想が寄せられました。

また、この作品はシリーズ第3作『兇人邸の殺人』へとつながる重要なステップでもあり、今村作品の世界観を広げる役割を担っています。


屍人荘シリーズの読む順番

今村昌弘の代表作「屍人荘シリーズ」は、以下の順番で読むのがおすすめです。

  1. 『屍人荘の殺人』
     デビュー作にして鮮烈な一冊。特殊設定ミステリの先駆けとして必読。
  2. 『魔眼の匣の殺人』
     本記事で紹介したシリーズ第2作。予言と超能力をテーマに物語が大きく広がります。
  3. 『兇人邸の殺人』
     シリーズ第3作。閉ざされた館を舞台に、さらなる不可能犯罪が描かれます。

順番に読むことで、葉村と比留子の関係やシリーズ全体の世界観の広がりをより深く楽しむことができます。




『魔眼の匣の殺人』からミステリにハマった方へおすすめ作品

「本格ミステリの面白さをもっと味わいたい!」という方には、以下の作品もおすすめです。

  • 『十角館の殺人』(綾辻行人)
     孤島の館を舞台にした、日本の新本格ミステリを代表する一冊。クローズドサークルの醍醐味を味わえます。
  • 『黒猫の三角』(森博嗣)
     S&Mシリーズ第1作。論理的なトリックと個性的なキャラクターが光る、知的なミステリ。
  • 『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
     トリックと叙述の妙が際立つ一冊。読後に驚きと切なさが同時に押し寄せます。
  • 『Another』(綾辻行人)
     学園を舞台にしたホラー×ミステリ。『屍人荘』と同じく、不穏な空気の中で起きる連続死を追います。
  • 『姑獲鳥の夏』(京極夏彦)
     オカルトと本格ミステリを融合させた独特の世界観。厚みはあるものの読み応え抜群です。

まとめ

『魔眼の匣の殺人』は、予言と超能力を題材にしながらも論理で解き明かす快感を味わえる、シリーズ屈指の傑作です。
読む順番は 『屍人荘の殺人』→『魔眼の匣の殺人』→『兇人邸の殺人』。順を追って読むことでシリーズ全体の魅力がより伝わります。

そして、この作品をきっかけにミステリにハマった方は、綾辻行人や森博嗣といった「新本格」の名作にもぜひ挑戦してみてください。
きっと『魔眼の匣の殺人』と同じように、驚きと知的な興奮を味わえるはずです。


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