あらすじ
小学校の女性教師・山浦美津子が自宅で死亡しているのが発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。さらに現場には睡眠薬入りのチョコレートが残されており、彼女の胃からも睡眠薬が検出される。事件は他殺と見なされ彼女の同僚が容疑者として浮かび上がるが・・・。
物語は四つの章から構成され、それぞれ異なる人物の視点で事件が描かれます。各章では、登場人物が独自の推理を展開し、事件の真相に迫ろうとしますが、どの推理も決定的な証拠を欠いており、真実は明らかになりません。
構成とテーマ
本作は、同一の事件を複数の視点から描くことにより真実が観察者の立場や視点によって異なることを示しています。各章の語り手は、被害者との関係性や個人的な感情によって、事件の解釈が異なります。これにより、読者は「真実とは何か?」という問いを投げかけられます。例えば同僚、生徒、元恋人etcによって見えるものが変わる。これこそがタイトルにもある「プリズム(*訳 多面体)」につながるのではないか?
また、作中では「十とおりの仮説」が提示され、どれも一理あるものの、決定的な証拠がないため、真相は明らかになりません。これにより、読者は推理小説の常識を超えた新たな視点を得ることができます。