中村文則『私の消滅』記憶が無くなってしまったら私の存在はどうなるのか?存在証明はどこにあるのか?

こんにちは!只野です!今回は中村文則さんの『私の消滅』をご紹介いたします。

早速ですが、皆さんは何があなた存在を証明していると思いますか?戸籍、見た目、そして記憶。そう、この本はある記憶を失った男がさまざまな記憶の断片をたどり自分を追い求めていく物語です。

物語は、男が部屋で目覚めたところから始まります。男には記憶がなく部屋を探すとある手記を見つけるのです。その手記にはある男の人生が描かれていました。懺悔や後悔の手記にこの手記に出てくる人物は自分ではないのかと思い始めます。そして手記に出てくる悲しい過去を背負った女性。彼女が現れたことで物語は静かにそして暗い残酷は精神を蝕んでしまう。

この物語は記憶=私という哲学的側面と心理学からみた記憶=私を問うています。

以下は『自伝的記憶をめぐるはなし』山田義裕 参照

記憶は,それ自体捉えどころのないものなので,メタファーを用いることで具体的な
イメージを付与されてきました。ここで二つの代表的な記憶のメタファーを見ていきま
す。一つは記憶の記録の側面にフォーカスした貯蔵(storage)のメタファー,もう一
つは記憶の想起つまり思い出す側面にフォーカスした物語(story)のメタファーです。
まず一つ目の,貯蔵のメタファーから見ていきましょう。よくある記憶のイメージ
というのは,心や脳の中に事物や出来事のコピーが蓄えられるというというものでは
ないでしょうか。もう少し具体的に言うと,私たちが何かを覚える時,その情報は脳
のどこかに何らかの形で整理されて収められ(コピーされ),私たちはいざ必要な時
に脳のその場所にアクセスをして必要な情報を抽出している,というイメージでなの
ではないでしょうか。

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/49453/1/NR38_001.pdf

ご拝読ありがとうございました。