19世紀のロシアに生きた小説家、フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)。
名前はちょっと難しいけれど、「人間とは何か?」を徹底的に問い続けた作家として、世界中で読まれ続けています。
波乱の人生
ドストエフスキーの人生は、静かなものではありませんでした。
- 若いころ、政治の集まりに参加して逮捕される
- 銃殺刑を宣告されるが、直前で恩赦(刑の取り消し)を受ける
- その後シベリアに流され、過酷な労働や囚人たちとの生活を経験
こうした極限の体験が、のちに彼の小説に「罪と罰」「苦しみと救い」というテーマを深く刻み込みました。

有名な作品
- 『罪と罰』
主人公ラスコーリニコフが「特別な人間なら人を殺してもいい」と考え、罪を犯します。でもその後、罪悪感に苦しみ続けます。人間の良心とは何かを問う作品。 - 『白痴』
純粋で優しい青年ムイシュキン公爵が、欲や嫉妬に満ちた社会に飛び込む物語。善良さは本当に力を持つのか、を考えさせられます。 - 『悪霊』
若者たちが過激な思想にのめり込み、破壊へと進んでいく姿を描きます。考え方が人を狂わせる怖さを告げる物語。 - 『カラマーゾフの兄弟』
父殺しの裁判をめぐって、信仰や無神論、自由や責任などの大きなテーマを描いた大作。ドストエフスキーの集大成です。
どこがすごいの?
ドストエフスキーの小説は「人間の心の深い部分」を描いています。
登場人物はみんな感情的で、迷って、苦しんで、必死に生きています。
彼の小説を読むとこんな問いにぶつかります。
- 善と悪は、どこで分かれるのか?
- 人は本当に自由なのか?
- 苦しみの中でも、人は救われるのか?
フロイト(精神分析学の父)は「人間の心理を発見した」と評価し、哲学者ニーチェも「ドストエフスキーから学んだ」と語りました。思想家にも大きな影響を与えたのです。
初めて読むなら?
いきなり『カラマーゾフの兄弟』は難しいので、次のような本がおすすめです。
- 『地下室の手記』(短め。人間はなぜ不合理なことをしてしまうのか?という話)
- 『罪と罰』(もっとも有名で、ストーリーも分かりやすい)
まずは短い作品や読みやすい新訳(光文社古典新訳文庫など)から入るとスムーズです。

読み方のコツ
- 人名をメモする
ロシア人の名前は長くて呼び方もいろいろ。相関図を作ると分かりやすい。 - 全部理解しようとしない
難しい議論は流してOK。人物の気持ちや行動に注目すると読みやすいです。
まとめ
ドストエフスキーは、「人間って何だろう?」という問いを小説で追いかけた作家です。
読むとちょっと重たい気持ちになるかもしれません。でも、必ず自分の心のどこかに響く言葉や場面に出会えます。
だからこそ、200年近くたった今でも彼の小説は読み継がれているのです。
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